消化器内科専門医の視点:上手な健康診断の活用法。東広島市の胃がん検診について
東広島市の元気すこやか健診について
毎年6月から始まる東広島市の「元気すこやか健診」は、40歳以上の市民の方が対象となる健康診断です。 健康診断は疾病の早期発見が可能になり、元気な毎日をサポートするために欠かせません。実は、この健康診断ですが、お住いの市によって、少しずつ内容が違うことをご存知でしょうか。今回は、東広島市の健康診断(元気すこやか健診)について深掘っていきたいと思います。
元気すこやか健診の特典:条件を満たす国保加入者は胃カメラが無料! ?
東広島市の元気すこやか健診は、東広島市からの助成により、無料で健康診断を受けることができる制度です。その中でも令和6年度から、年齢条件を満たす国民健康保険(国保)加入者の方は、 胃がん検診を兼ねて、無料で胃カメラも受けることができるように変わったのが、東広島市の健診の大きな特徴です。特に消化器系の腫瘍は進行するまで症状が出にくいことが多いので、定期的なチェックを受けることが非常に重要です。そこで今度は、胃カメラが、胃がんの予防において大切である理由をお話ししていきます。
胃がんは感染症? ピロリ菌と胃がん
実は感染症が原因で、がんになる病気は、肝炎ウイルスが原因の肝細胞がんや、乳頭腫ウイルスが原因の子宮頸がんなどが代表的でよく知られています。これらウイルスが、がんの原因となる訳ですが、ばい菌(細菌)が原因で、がんができる病気は「胃がん」だけです。胃がんの99%はピロリ菌が原因とされています。逆にピロリ菌に感染していない人は、ほとんど胃がんになりません。
ピロリ菌感染で、胃がんが起きる理由
ピロリ菌が胃の細胞に毒素(CagA)を注入することで、遺伝子を壊し、胃がんを引き起こすと考えられています。人体は人体の精密な設計図ですので、この遺伝子に傷がつくと、がんが生じてしまいます。残念ながら、わが国では既に多くの方がピロリ菌に感染していることが分かっています。では、既にかかっている方も、ピロリ菌の除菌をすることで胃がんの予防ができるのでしょうか。
除菌は早い方が有効?
一般的に、胃炎ピロリ菌の除菌を行うことで、発がん率が3分の1に低下することが知られていますが、実は、ピロリ菌除菌は、若いうちに行う方が、がんの予防に有用であることはあまり知られていません。ピロリ菌感染による胃炎(胃が弱ること)が進まないうちに除菌をするほど、その後の胃がんになるリスクが少ないとされています。逆にいえば、若い方は、ピロリ菌に感染していたとしても、ラッキーなことに、胃炎は進んでいない可能性があります。保険診療で除菌をするためには、必ず事前に胃カメラを行い、ピロリ菌感染の有無を確認することが必要ですが、胃カメラを行うことで、この胃炎の広がりも同時に確認することができる訳です。
がんの予防と次世代への感染予防
ピロリ菌感染者の多くは、赤ちゃんの時に感染します。昔は井戸水などからの水経感染が多い時代もありましたが、現在は衛生状態がよくなり、水からの感染は減っています。一方で、80%が家族内感染とされ、主な感染経路は、保菌者である母親から赤ちゃんへの経口感染と考えられています(母>父)。即ち、感染者である親がピロリ菌除菌をすることで、次世代の子供への感染を防ぐことにもつながる訳です。若い世代への感染率低下による胃がんの撲滅、これがもう一つの重要なピロリ菌除菌の意義です。更には、自分がピロリ菌陽性であれば、親がピロリ菌に感染している可能性も高く、これが契機で親のピロリ菌感染が分かり除菌をすることができれば、家族の胃がん予防にも繋がる訳です。
やめてはいけない内視鏡検査
除菌を行うことで、胃がんのリスクは軽減しますが、残念ながら、胃がんを完全に防げるわけではありません。除菌前に既に胃炎が進行している場合には、除菌後も定期的な内視鏡検査を受けて頂く必要があります。定期的な内視鏡検査を行って頂くことで、たとえ胃がんができても、早期がんの段階で発見することができ、内視鏡的にがんを切除することで、根治を目指すことができます。
上手な健康診断の活用法
胃がん検診には、バリウム検査と内視鏡検査がありますが、胃がんによる死亡率の減少には、圧倒的にバリウム検査よりも内視鏡検査が優れていることが分かっています。これまで、バリウム検査だけの胃がん検診で「胃がん」がなければ「合格」となっていた方も、ピロリ菌の有無を確認したり、胃炎の有無を確認する事が、がん予防のために大変重要であることがお分かり頂けたでしょうか。東広島市の健康診断に内視鏡検査が組み込まれたこの機会に、健康診断で胃腸の専門医を受診すると、健診と同時にがん検診も兼ねることができて、お得なわけです。将来の健康のために、上手に東広島市の健康診断を活用しましょう。