Blog

その他

【IBD専門医が解説】潰瘍性大腸炎・クローン病の食事ガイド!お腹に優しい高たんぱく食とは

今回は、炎症性腸疾患(IBD)専門医の視点から、 潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さん向けに、食生活に関して解説をしてみたいと思います。

まず結論からお話しすると、潰瘍性大腸炎(UC)の活動期(症状が続いている時期)は、腸への負担低減や腸粘膜の修復のために、高たんぱく・低脂質・低残渣(低食物繊維)の食事が基本となります。

一方で、寛解期(症状はない時期)には厳しい制限は不要ですが、脂質の摂りすぎ(加工肉や油の多い肉、揚げ物など)には注意が必要です(特にクローン病の患者さんは栄養療法が大事です)。毎日の食事では、バランスの良い食事を心がけ、脂質の少ない肉類を中心に適量のタンパク質を摂るようにすることが望ましいです。

そもそもひと昔前までは、潰瘍性大腸炎やクローン病は稀な病気の扱いで、現在でもIBDの専門医は少なく、地方で病気にかかっておられる方は都心の総合病院へ通院しなければならないケースも多かったのではないでしょうか。ところが、IBD患者さんは近年増加傾向にあり、IBD専門医として外来をしていると、これらの病気が疑われて紹介を頂く機会も増えています。また、外来で診療をしていると潰瘍性大腸炎の患者さんから、日頃の食事相談を受ける機会も増えています。

病気の増加背景には複数の要因があると言われていますが、見逃せない大きな要因が食生活の変化(食事の欧米化)と言われています。

潰瘍性大腸炎・クローン病と食事の関係

過去の研究からは、肉や脂質の摂りすぎがIBDの発症リスクを高め、野菜や果物、食物繊維がリスクを下げる可能性が指摘されています。ひと昔前までの日本人の食事といえば、穀物や豆類を中心とした植物性食品が主流でしたが、近年では食の欧米化が進み、脂質や肉類の摂取が大幅に増え、逆に食物繊維の摂取はどんどん減少しています。こうした食文化の変化は、我々の腸内細菌のバランスを崩してしまい、IBDの発症に関与するだけでなく、過敏性腸症候群や糖尿病、脂肪肝、アレルギー疾患などの病気にも深く関わっているとされています。

日常生活で注意すべき食事とは

動物性タンパク質は悪者?

まず、牛肉や豚肉などの肉類に多く含まれる「動物性タンパク質」についてお話ししたいと思います。動物性蛋白には「必須アミノ酸」がバランスよく含まれており、筋肉やホルモンなどの、体を支える大切な栄養源となっています。一方で、牛肉や豚肉にはたっぷり脂質が含まれており、特に加工肉(ソーセージやベーコンなど)では防腐剤など保存料によるダブルパンチで、腸の炎症を悪化させたり、大腸がんのリスクを高めたりする可能性が指摘されています。また「動物性タンパク質」は、腸内の「悪玉菌」を増やす原因となりますので、腸内環境を悪化させてしまう可能性があります。

一方で、動物性タンパクの中でも鶏肉や卵、魚は、比較的安心して食べられる良質なたんぱく質と考えられています。特にムネ肉やササミは「高タンパク・低脂肪」ですので、病気の方も安心して食べて頂けます。

また青魚(サバ・サンマ・イワシなど)に多く含まれるEPAやDHAには、腸の炎症を抑える効果も期待されています。IBDの方にとっては、魚は積極的に取り入れたい食品の一つです。

これらの理由から、私のIBD外来では、特に牛肉や豚肉が好きな方には、意識的に牛肉や豚肉の摂取頻度や量を減らして、代わりに魚や鶏肉の摂取することをおすすめしています。

特に病気が活動期の患者さん(症状が続いている時期)では脂身の少ない鶏肉や白身魚、卵、豆腐などの良質なたんぱく質を摂取頂き、柔らかく煮る・蒸すなどの調理法も有用です。

専門医が避けて欲しい食べ物

ただし、生魚や生牡蠣、鶏肉のタタキなどは、食中毒(ビブリオやアニサキス、カンピロバクター)のリスクが高い食品です。特に潰瘍性大腸炎やクローン病など腸に病気を患っている方の場合には、下痢や血便、腹痛が元々の病気が悪化しているのか、食当たりを起こしたのか判断が難しくなることがありますので、これらの食事は控えて頂いております。また感染性腸炎を併発することで、元々の持病が悪くなることも、しばしば経験されます。特にステロイドや、イムランやロイケリンなどの免疫抑制剤/免疫調整剤などを外来で服用中の方は、生ものの摂取には注意が必要です。

こうして考えると、動物性蛋白は魚から摂取して、植物性食品が多く含まれる〝昔ながらの日本食‘’が、いかに我々日本人の腸にとって、合理的でなおかつ腸に優しい食事であるのかが見えてきます。そして私自身も、外来でIBDの患者さんと食事の話をする毎に、自分の食生活を見直すきっかけになっています。

「地中海食」と潰瘍性大腸炎・クローン病

最後にIBD患者さんの食事で、最近注目されている「地中海食」のお話をします。

地中海食とは、地中海沿岸の伝統的な食習慣として世界的に知られており、下記の特徴があります。

①肉類や乳製品は控えめで、魚介類を多く食べること

②野菜や果物が豊富であること

③オリーブオイル、豆類、全粒穀物が多いこと

④適量の赤ワインの摂取 

この食事スタイルが、IBDの再燃や症状を和らげることができるのではないかと注目を集めています。

地中海食が腸に優しい理由

地中海食に多く含まれるオリーブオイルの不飽和脂肪酸や、野菜や果物に含まれる成分が「抗酸化成作用」を発揮したり腸内環境を整え、逆に体に悪影響を及ぼす飽和脂肪酸を多く含む肉類や乳製品の摂取を控えることで、生活習慣病などの現代病を防いでくれるものと考えられています。

日本人も、地中海食の良いところを上手に日常の食事に取り入れることで、IBDの症状が落ち着くだけでなく、生活習慣病の予防にもつながるかもしれません。

IBDの患者さんでは、油をオリーブオイルに替える、肉を減らして魚を選ぶ、飲酒から適量のワインへ変更するなどが、食事面では参考になるかと思います。

 まとめ

長々とお話をしましたが、炎症性腸疾患患者さんに対する食生活として、まず大切な事は「極端な食生活を避けて頂く事」そして、食事のバランスを意識して頂くことが重要です。それだけでも腸への負担は変わってきます。

そして明日からの食事に、「日本食」や「地中海食」を取り入れると、より効果的と思われます。

潰瘍性大腸炎やクローン病に罹患されている方で、日常生活での疑問や病気の診断や最新の治療について興味のある方は、当院のIBD専門外来まで、いつでもご相談にいらして下さい。

❖潰瘍性大腸炎のご相談なら前田医院まで❖   https://www.maeda-cl.net/ibd/

執筆者情報

院長

佐々木 政敏

経歴

昭和60年
島根医科大学病院
昭和62年
広島大学病院
平成元年
西広島医療センター
平成3年
前田医院院長
平成26年
東広島地区医師会 理事就任
平成27年
東広島内科会 会長就任

副院長

佐々木 悠貴

経歴

平成28年
倉敷中央病院
平成31年
倉敷中央病院リバーサイド
令和1年7月
日本鋼管福山病院
令和1年10月
岡山市立市民病院
令和2年4月
倉敷中央病院
令和3年4月
広島市立広島市民病院
令和5年4月
岡山大学病院
令和6年4月
広島市立広島市民病院