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大腸内視鏡検査における下剤(腸管洗浄液)の種類と特徴について:内視鏡検査ガイド①

大腸内視鏡検査の前処置(下剤の服用)は、患者さんにとって最もハードルが高い部分ですよね。専門医として、各薬剤の組成や作用メカニズム、そして「どんな味がするのか」「どんな人に向いているのか」を一歩踏み込んで解説します。

大腸内視鏡検査用下剤:

① モビプレップ(モビプレップ配合内用剤)

現在、日本の医療現場でシェアが非常に高い薬剤です。

  • メカニズム: ポリエチレングリコール(PEG)という高分子化合物に、アスコルビン酸(ビタミンC)を大量に配合しています。ビタミンCの浸透圧効果を利用して腸に水分を集めるため、従来のPEG製剤よりも少ない液量で高い洗浄力を発揮します。
  • 特徴: 洗浄スピードが速く、検査当日の拘束時間を短縮できます。
  • 味と服用感: 濃い梅味。アスコルビン酸由来の酸味と塩気が混ざった独特の味です。
  • 適応: 比較的体力があり、飲む液量をなるべく抑えたい方に適しています。

② サルプレップ(サルプレップ配合内用液)

2021年に登場した、最も飲む量が少ないタイプの一つです。

  • メカニズム: 硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウムの3種類の塩類(高張液)を主成分としています。これにより、腸管内に強力に水分を引き出します。
  • 特徴: 1回あたり480mLを2回に分けて服用するだけなので、液体を飲むのが苦痛な方に好評です。
  • 味と服用感: 爽やかなスポーツドリンク系ですが、後味に特有の苦味を感じる場合があります。
  • 注意: 脱水のリスクがあるため、心疾患や腎機能に問題がある方高齢者には慎重に使用します。

③ ピコプレップ(ピコプレップ配合内用剤)

低容量タイプの下剤です。

  • メカニズム: 刺激性下剤(ピコスルファート)と浸透圧下剤(クエン酸マグネシウム)を組み合わせたハイブリッド型です。
  • 特徴: 薬剤自体の液量はわずか300mL(150mL×2回)。その後、お茶や水などの「好きな透明な飲み物」を自分で補充して飲む形式なので、下剤特有の味が苦手な人に最適です。
  • 味と服用感: オレンジ風味で、粉末を溶かす際に少し熱を帯びる反応があります。
  • 注意: 洗浄力がモビプレップ等に比べると弱く、若年向きで便がなかなか出ない人や便秘がある方には不向きです。他の下剤と比較して、便が綺麗になるまで時間を要します。

④ マグコロールP(クエン酸マグネシウム)

古くからあるタイプの水に溶かして飲む粉末タイプの下剤です。

  • メカニズム: クエン酸マグネシウムの浸透圧により、腸の中に水分を保持し、便を洗い流します。
  • 特徴: 1.8Lと飲む量は多いですが、電解質のバランスが取れており、昔から信頼されている薬剤です。
  • 味と服用感: おいしくない「ポカリスエット」です。下剤の中では「美味しい」と評されることも多く、味重視する方に選ばれます。
  • 注意: 高マグネシウム血症のリスクがあるため、透析中の方や腎機能が低下している方には使用できません

⑤ ニフレック(等張電解質液)

世界でもスタンダードなPEG製剤です。

  • メカニズム: 血液とほぼ同じ浸透圧(等張)になるよう調整されています。腸から水分を吸収させず、また体内から水分を奪うこともないため、体液バランスへの影響が極めて少ないのが特徴です。
  • 特徴: 最も安全性が高く、心臓や腎臓に持病がある方、高齢の方への第一選択となります。
  • 味と服用感: 「味のないスポーツドリンクに塩を混ぜたような味」と表現され、2L飲むのが心理的に負担になる場合があります。

⑥ ピコスルファート(ピコスルファートナトリウム)

当日の洗浄剤ではなく、前日の夜に服用する「補助剤」です。

  • メカニズム: 大腸の細菌によって活性化され、大腸の粘膜を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を促進します。
  • 特徴: 検査当日の朝にスムーズに排便を開始させるための呼び水としての役割を果たします。虚血性腸炎の既往や、大腸に狭窄が疑われる場合には使用できません。
  • 服用感: 数滴から数ミリリットルを水に混ぜて飲むだけなので負担はありません。

⑦ 高張マグコロール(マグコロール液)

粉末の「マグコロールP」をあらかじめ高濃度に溶かした状態の液体製剤です。

  • メカニズム: クエン酸マグネシウムの浸透圧により、腸の中に水分を保持し、便を洗い流します。
  • 用途: 主に前日の夜の「導入」として、あるいは検査当日の「追加洗浄」として用いられます。
  • 特徴: 高濃度(高張)のため、腸管内の水分を強力に引き出し、便をドロドロの状態にする力が強いです。④を強力にして、飲む量を少なくした下剤です。

前田医院での検査前下剤について

当院では日頃の便秘の有無や、基礎疾患、検査時間などに応じて、個々に合った下剤を選択して服用して頂きます。しかし、どの下剤であったとしても、大切なのは「検査前の食事制限」をしっかり守ることです。数日前~前日までの間に繊維質の多いものを食べてしまうと、どんな強力な下剤でも綺麗にするのが難しくなります。検査に関する疑問や質問などは、適時診察時にご相談ください。

執筆者情報

院長

佐々木 政敏

経歴

昭和60年
島根医科大学病院
昭和62年
広島大学病院
平成元年
西広島医療センター
平成3年
前田医院院長
平成26年
東広島地区医師会 理事就任
平成27年
東広島内科会 会長就任

所属学会・資格

  • 日本内科学会(内科認定医)
  • 日本臨床内科会(臨床内科専門医)
  • 日本消化管学会(胃腸科認定医)
  • 日本東洋医学会(漢方専門医)
  • 日本医師会(認定産業医)
  • 日本消化器病学会(消化器病専門医)
  • 難病指定医

副院長

佐々木 悠貴

経歴

平成28年
倉敷中央病院
平成31年
倉敷中央病院リバーサイド
令和1年7月
日本鋼管福山病院
令和1年10月
岡山市立市民病院
令和2年4月
倉敷中央病院
令和3年4月
広島市立広島市民病院
令和5年4月
岡山大学病院
令和6年4月
広島市立広島市民病院

所属学会・資格

  • 日本内科学会(内科専門医)
  • 日本消化器病学会(消化器病専門医)
  • 日本消化器内視鏡学会(内視鏡専門医)
  • 日本消化管学会(胃腸科専門医)
  • 日本肝臓学会(肝臓専門医)
  • 日本炎症性腸疾患学会(IBD専門医)
  • 難病指定医