内視鏡検査は異常なし・・・でもお腹の張りやガス・下痢が続く原因は? 専門医が今話題の「低FODMAP(フォドマップ)食」を解説!
「内視鏡検査は異常なし。でもお腹の不調が続く」そんな方へ。
大腸カメラの検査を受けたけれど、病気は見つからなかった」 「それなのに、なぜかいつもお腹が張って苦しい……」 「ガス(おなら)が頻繁に出て、人前に行くのが気になる」 「下痢や便秘を繰り返してしまい、外出するのが不安」
内視鏡検査で「異常なし」と言われたにもかかわらず、こうしたお腹の慢性的な不調に悩まされている方は決して少なくありません。
実は、このような症状は「過敏性腸症候群(IBS)」と呼ばれる状態によく見られます。腸の粘膜に目に見える傷や炎症はなくても、腸の「働き」や「知覚」が過敏になることで、お腹のトラブルが引き起こされてしまうのです。
今回は消化器内科専門医、特に「大腸の専門医」の視点から、お腹の不調を根本から見直す「お腹の平和」をテーマに取り上げます。昨今、世界中で注目を集めている科学的な食事療法「低FODMAP(フォドマップ)食」について、具体的な食材例や実践ステップを分かりやすく解説します。単なる流行のダイエットではなく、医学的な根拠に基づいた「正しい腸の整え方」を一緒に見ていきましょう。
そもそも「FODMAP」って?
低FODMAP食について理解するために、まずは「FODMAP」という言葉の意味と、なぜこれらがお腹の不調の原因になるのかというメカニズムを知っておきましょう。
FODMAPとは、「小腸で吸収されにくい特定の糖質(短鎖炭水化物)」の総称です。以下の4つの糖質グループの頭文字を組み合わせて作られた言葉です。
- Fermentable(発酵性):腸内細菌のエサになりやすく、大腸で急激に発酵する性質を持っています。
- Oligosaccharides(オリゴ糖):小麦、ライ麦、玉ねぎ、にんにく、大豆、豆類などに多く含まれます。
- Disaccharides(二糖類):牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品に含まれる「ラクトース」です。
- Monosaccharides(単糖類):はちみつ、リンゴ、梨、ドライフルーツなどに多く含まれる「フルクトース」です。
- Polyols(ポリオール):キシリトールやソルビトールなどの人工甘味料、キノコ類、桃やプラムなどに含まれます。
FODMAPがお腹のトラブルを引き起こす2大メカニズム
これらの糖質は小腸でうまく吸収されないまま、ダイレクトに大腸へと送られます。大腸に届いたFODMAPは、腸内で次の2つの問題を引き起こします。
大腸での過剰な発酵(ガスの発生) 大腸に住む腸内細菌がFODMAPをエサとして猛烈に分解(発酵)を始めます。この時に大量のガス(おなら)が発生し、これが「お腹の張り(膨満感)」や「お腹の痛み」の原因になります。
浸透圧作用(腸内の水分過剰) 吸収されなかった糖質は大腸内で水分を強力に引き寄せる性質(浸透圧作用)があります。これにより腸内の水分が過剰になり、便がゆるくなって「下痢」を引き起こしたり、腸が異常に引き伸ばされて刺激を感じやすくなったりします。

「FODMAP」の具体例
「FODMAP食」の具体例について解説します。
私たちが「体に良い」「腸活に効果的」と思って毎日熱心に食べている食材が、実は「高FODMAP食」であり、自分自身でお腹の不調を悪化させているケースが多々あります。
お腹に負担のかかりやすい「高FODMAP食(控えめにしたい食品)」と、お腹に優しい「低FODMAP食(積極的に選びたい食品)」の具体例をカテゴリ別にまとめました。
| カテゴリ | 高FODMAP(控えめにしたい) | 低FODMAP(積極的に選ぼう) |
| 主食 | 小麦(パン・ラーメン、パスタ)、ライ麦 | 米、玄米、そば(十割)、グルテンフリー麺 |
| 野菜 | 玉ねぎ、にんにく、ゴボウ、アスパラガス、 | キャベツ、レタス、トマト、ブロッコリー、ナス、にんじん |
| 果物 | リンゴ、桃、梨、ドライフルーツ、 | バナナ、イチゴ、キウイ、オレンジ |
| 乳製品 | 牛乳、ヨーグルト、アイス | 豆乳(調整豆乳はNGの場合あり)、硬いチーズ |
| 豆・ナッツ | 大豆、小豆、カシューナッツ | アーモンド(少量)、くるみ、豆腐(木綿) |

日本人に多い見落としがちな、FODMAP食の「落とし穴」
日本の伝統的な食生活や身近な外食には、複数の高FODMAPが重なり合っているメニューが多く存在します。特に以下のメニューには注意が必要です。
- カレー・シチュー(玉ねぎ+小麦粉ルウ) :ベースとなるルウに大量の「玉ねぎ」と「小麦粉」が使われており、一皿で高FODMAPが重なる「ダブル構造」になっています。
- ラーメン、うどん、パスタ(小麦麺、にんにく) :外食の定番ですが、麺が小麦であることに加え、スープやソースに「にんにく」や「玉ねぎ」が凝縮されています。
- 菓子パン・サンドイッチ:「(小麦、砂糖・果糖、乳製品) :朝食で無意識に摂取しやすいですが、小麦、砂糖(果糖)、乳製品がトリプルで詰まっています。
- はちみつ入りヨーグルト(乳糖+果糖) :一見すると究極の健康食・腸活食ですが、乳糖(ヨーグルト)+果糖(はちみつ)の組み合わせは、IBSの方の腸内では過剰に発酵してガスを激増させる原因になります。」
- 食後のフルーツ(リンゴ・梨・桃):体に良いからとたくさん食べ過ぎると、果糖やポリオールの影響で症状悪化の典型例となります。
- 納豆・豆料理:大豆に含まれるオリゴ糖は健康に良いですが、お腹が張りやすい人にとってはガスの強力な発生源(落とし穴)になります。
「健康に良いと思っていた食品」が、実はお腹の不調の原因のことも多いです。
そしてこれらには下記の共通点があります。
・いずれも健康に良いと思われている食品
・日本人の食卓で頻出の食事
・複数の高FODMAPが重なっている
つまり、腸によかれと思って続けている食習慣が、逆に仇となっている可能性があります。
実践のステップ:まずは「3週間」試してみよう
「低FODMAP食」を聞くと、「一生大好きなパンや玉ねぎを食べられないの?」と不安になるかもしれませんが、決してそうではありません。
この食事療法の真の目的は、食事日記をつけながら、自分の腸に合わない『犯人(特定の糖質)』をピンポイントで特定することにあります。以下の3つのステップで進めていきます。
- ステップ1:導入期(3週間): 徹底的に避ける期間
まずは3週間、すべての「高FODMAP食品」をできるだけ避け、主食を米にするなど「低FODMAP食品」のみで過ごします。これにより、一度腸内環境をリセットし、お腹の張りや下痢などの症状が改善するかどうか確かめます。
- ステップ2:再導入期(チャレンジ期): 犯人を特定する期間。
お腹の状態が落ち着いたら、避けていた高FODMAP食品を「1グループずつ、少しずつ」食事に戻していきます(例:今週は小麦を少し食べてみる、翌週は乳製品を試すなど)。どの食材を食べたときに自分のお腹の症状(ガスや腹痛)が再発するかを日記につけて観察します。
- ステップ3:維持期(カスタマイズ期): 自分専用の食事法を確立。
再導入期で「自分のお腹に悪影響を与えている」と判明した特定の食材だけを控えめにし、問題がなかった他の食品は自由に食べる生活に戻します。これにより、ストレスのない「自分専用の腸に優しい食事スタイル」が完成します。
まとめ:自分の体との対話を大切に
低FODMAP食を取り入れる上でもっとも大切なポイントは、「一般的に世間で『健康に良い』とされている食品が、必ずしも自分の腸に合うとは限らない」と知ることにあります。
まずは1食、朝食のパンをご飯に変えてみる。サラダにかけるドレッシングを、にんにくやオニオンの入っていないシンプルなオリーブオイルと塩に変えてみる。そんな小さな一歩から、毎日の食事の見直しを始めてみませんか?
高FODMAP食は、特別な食品ではなく、私たちの日常に深く溶け込んでいることが最大の落とし穴です。「内視鏡検査では異常がないのに…」と諦めず、食事を少しずつ工夫することで、つらい下痢や便秘、膨満感から解放された「お腹の平和」を目指していきましょう。
もし食事を改善してもお腹の不調が続く場合や、自己判断での食生活の変更に不安がある方は、他の隠れた疾患がないかを含め、どうぞお気軽に当院の消化器内科・大腸専門外来までご相談ください。
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当院では、過敏性腸症候群(IBS)や機能性疾患に対する専門的な診断はもちろんのこと、患者さんの不安を取り除く苦痛の少ない内視鏡検査を行っています。長引くお腹の張りや便通異常にお悩みの方は、いつでもお気軽にお問い合わせください。


