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内視鏡専門医の視点:内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を受けるタイミングと間隔とは?

内視鏡検査を受けた患者さんから、よく「次はいつ受けたらいいんでしょうか?」というご質問をいただきます。そこで今回は、内視鏡検査を受けるタイミングや、検査の間隔について内視鏡専門医の立場から説明します。

◆胃カメラが必要な理由 

まず、胃カメラ検査の必要性についてお話しします。胃カメラは、胃や⾷道、⼗⼆指腸の病気を早期に発⾒するために重要な検査であり、特に胃がんやピロリ菌感染の診断に有効です。日本では多くの自治体で、50歳以上の⽅に定期的な実施が推奨されています。

◆胃カメラでわかること

胃がんの原因の99%は、ピロリ菌の感染による慢性胃炎(萎縮性胃炎)です。ピロリ菌が幼少期に胃に感染すると、慢性的にピロリ菌が胃に住み着き、症状が無くても徐々に胃が弱り、やがて「慢性胃炎」になります。これが、胃がんが発生する下地となります。したがって、胃カメラ検査をする際に、我々は①ピロリ菌感染をしているかどうか、②萎縮性胃炎があるのか、③萎縮がどの程度まで広がっているのか、④萎縮粘膜に早期がんがないか などに注目しながら内視鏡検査を行っています。

・ピロリ菌感染の有無:ピロリ菌の持続感染による慢性胃炎は、将来の胃がんリスクが⾼まるため、除菌治療が重要です。

・胃炎の評価:胃の炎症萎縮の範囲や程度を把握することで、個々の発がんリスクに応じた検査計画や管理を行います。

・胃がんの早期発⾒:⾃覚症状が出にくいため、 定期の内視鏡検査での早期発⾒が鍵になります。

◆内視鏡検査を受けるタイミング:

ピロリ菌の感染や萎縮性胃炎の有無、がんの早期発見が目的ですので、下記のような場合に内視鏡検査を受けることをお勧めします。

 ☛家族歴や健康診断などで、ピロリ菌感染が疑われる場合

 ☛バリウム検査で異常を指摘され、精密検査が必要な場合 

 ☛症状がある場合(喉のつかえ感、胃痛、胸やけ、黒色便、貧血、体重減少)

 ☛特に症状がなくても50歳以上になった方

 ☛50歳未満でも、胃がんの家族歴がある場合

 ☛飲酒や喫煙をされる方

内視鏡検査の頻度:

症状が無い方に胃カメラを受けていただく主な目的は、ピロリ菌感染を発見し除菌をすることと、胃がんを早期に見つけることです。ですから、どれくらいの間隔で検査を受ければいいのかは、「どのくらい胃がんになる危険性が高いかどうか」によって個別に判断されます。ピロリ菌除菌歴のある⽅や慢性胃炎(萎縮性胃炎)と指摘された方は、胃がんができやすい胃の健康状態と考えられるため、胃がんの早期発見のためには、1年間隔での検査が勧められます。一方でピロリ菌感染がない場合は、基本的にはがんができにくいタイプの胃と考えられますので、その他の所見も加味しながら、医師の判断で決定されます。また内視鏡検査時に比較的に診断する機会が多い、胃粘膜下腫瘍を認めた場合にも、1年間隔での検査が勧められます。

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)でわかること

大腸カメラを受けて頂く大きな目的としては、大腸がんをできるだけ早期に発見すること、良性の大腸ポリープのうちに切除して、大腸がんを予防することです。大半の大腸がんは、良性のポリープ(腺腫)から時間をかけて大腸がんに進行するため、大腸がんは数少ない「予防できるがん」と言えます。ただし、大腸の粘膜には痛覚がないため、体内に大腸がんができても、かなり進行するまで何の症状も自覚しないことがほとんどです。ですから、「血便が出た」、「下痢が続く」などの症状が出てから、内視鏡検査を受けても、大腸がんの予防や早期発見はできません。これら腸のSOSサインが出る前に、定期的に内視鏡検査を受けて頂くことで、大腸がんで命を落とす確率は非常に低くなります。大腸がんができる確率は、40歳を過ぎた頃から年齢とともに上昇していきます。40歳になったら、症状が無くても毎年必ず、東広島市の大腸がん検診(便潜血検査)を受ける、もしくは思い切って一度大腸カメラを受けていただきたいところです。

・⼤腸がんの発⾒:早期発見・早期治療で予後が⼤きく改善します。

・大腸ポリープの確認と切除:腫瘍性ポリープを切除することが、がんの予防に繋がります。

・炎症の有無:潰瘍性大腸炎など、腸に炎症をきたす病気の診断に有効です。

◆大腸内視鏡検査を受けるタイミング

 ☛便潜血陽性となった方(1回でも陽性となった場合も大腸カメラが推奨されます)  

 ☛症状がある場合(血便、便秘や下痢、腹痛、体重減少や食欲不振)

 ☛特に症状がなくても40歳以上になった方

 ☛大腸がんの家族歴がある場合

 ☛炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の患者さん

◆大腸内視鏡検査の頻度

大腸ポリープの種類や個数、家族歴などによって推奨される検査間隔が異なります。大腸がんの治療後の方や、大腸ポリープを認めた場合(内視鏡治療後の方)は、短期間での再検査が勧められますので、外来受診時にご相談ください。これまでの内視鏡検査や治療の経過を加味して個別に対応させて頂きます。また過去の検査で「異常なし」と言われた方も、1回の内視鏡検査では見逃してしまっている可能性もゼロではありません。ただ、仮に見逃しがあったとしても5年のうちに命を落とすような状態までこと進行することは稀ですので、5年を目安に再検査をして頂けると安心かと思います。

大腸内視鏡検査の頻度の目安

状況検査頻度の目安
症状なし・50歳以上医師相談(5年前後)
腫瘍性ポリープあり1〜3年ごと(医師判断)
IBD(潰瘍性大腸炎など)1〜2年ごと
家族歴あり40歳頃から医師相談