内視鏡専門医の視点:内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)を受けるタイミングと適切な間隔とは?
内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)を受けられた患者さんから、外来で特に多くいただくのが「次はいつ検査を受けたらいいんでしょうか?」というご質問です。
「毎年受けるべきなのか」「数年はあけても大丈夫なのか」など、適切な検査の間隔は一律ではなく、実は患者さん一人ひとりの「がんのリスク(危険度)」によって大きく異なります。
今回は、年間多数の検査を行う内視鏡専門医の立場から、胃カメラ・大腸カメラをそれぞれ受けるべき適切な頻度や、見逃してはいけない受診のサイン(タイミング)について分かりやすく解説します。
定期的な胃カメラ(胃内視鏡検査)が必要な理由
まず、胃カメラ検査を行う本質的な目的についてお話しします。 胃カメラは、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察し、小さな病変を早期に発見するための検査です。特に「胃がんの早期発見」と「ピロリ菌感染の診断」において、これに勝る検査はありません。
日本の多くの自治体では、50歳以上の方を対象に定期的な胃カメラ検査の実施を推奨していますが、それには明確な医学的根拠があります。
胃カメラの観察で専門医が見ている「4つのポイント」
胃がんの原因の95〜99%は、幼少期に感染したピロリ菌による慢性胃炎(萎縮性胃炎)です。ピロリ菌に感染すると、自覚症状がないまま何十年もかけて胃の粘膜が弱り、萎縮(徐々に薄くなること)が進んでいきます。これが胃がんを発生させる「下地」となります。
そのため、内視鏡専門医は胃カメラの際、ただ「がんが無いか」を見るだけでなく、以下のポイントを細かく評価しています。
ピロリ菌感染の有無
胃内に入ると、ピロリ菌に現在感染しているかどうか(または過去に感染していたか)を判断します。
胃炎評価
胃の粘膜に「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」が起きているかを確認します。そして、萎縮がある場合、その範囲や程度を把握することで、個々の発がんリスクに応じた検査計画や管理を行います。
早期がんの発見
ダメージを受けた粘膜に、隠れた「早期胃がん」や前がん病変がないかを確認します。⾃覚症状が出にくいため、 定期の内視鏡検査での早期発⾒が鍵になります。
胃がんは初期段階ではほぼ100%自覚症状がありません。だからこそ、症状が出る前に定期的な内視鏡検査でチェックすることが命を守る鍵になります。
【胃カメラの頻度】次の検査はいつ?あなたのリスク別・推奨間隔
症状がない方が胃カメラを受ける適切な間隔は、「どれくらい胃がんになりやすい胃の状態か」によって個別に判断されます。ご自身の状態に合わせて以下の目安を参考にしてください。
① 毎年受けるべき:1年間隔のケース
- ピロリ菌の除菌治療を受けたことがある方
- 過去の胃カメラで「慢性胃炎(萎縮性胃炎)」と指摘された方
- 胃カメラで「胃粘膜下腫瘍(GISTなど)」を認め、経過観察中の方
【専門医からの注意点】 ピロリ菌の除菌に成功しても、過去に受けてしまった胃粘膜の萎縮(ダメージ)は元通りには治りません。除菌後も「胃がんが生まれやすい性質」は残るため、年に1回の定期的な胃カメラによるモニタリングが強く推奨されます。
③ 専門医の判断で間隔をあけても良いケース
- ピロリ菌に感染したことがない方(ピロリ菌陰性)
ピロリ菌の感染歴がない方の胃は、基本的には「胃がんができにくいタイプの美しい胃」です。そのため、その他の細かい所見(逆流性食道炎の有無など)も加味しながら、医師の判断で2〜3年など間隔をあけることが可能です。
胃カメラを「受けた方がよい人」とは?
定期検診のタイミングを待たず、以下のような状況や症状がある場合は、速やかに内視鏡専門医を受診し、胃カメラを予約してください。
- 喉のつかえ感、長引く胃の痛み、胸やけ、胃もたれがある
- 黒い便(タール便)が出た、原因不明の貧血がある、急激に体重が減少した
- 健康診断のバリウム検査(胃X線検査)で「要精密検査」の異常を指摘された
- 血縁の家族にピロリ菌感染者や胃がんになった人がいる(50歳未満でも推奨)
- 日常的に飲酒や喫煙の習慣がある
- 特に症状はないが、50歳以上になって一度も胃カメラを受けたことがない
「大腸カメラ」は究極のがん予防?
次に、大腸カメラの重要性についてです。大腸カメラを行う最大の目的は、「大腸がんを早期発見すること」、そして「良性のポリープのうちに切除して、大腸がんになるのを未然に防ぐこと」です。
実は、大半の大腸がんは、最初からがんとして発生するのではなく、「良性のポリープ(腺腫)」が数年かけて徐々に大きくなり、がん化するというプロセスをたどります。つまり、がん化する前のポリープを大腸カメラで見つけ、その場で切除(日帰りポリープ切除術など)してしまえば、将来の大腸がんをほぼ確実に予防できます。大腸がんは、数少ない「完全に予防できるがん」なのです。
「お腹のSOSサイン」が出てからでは遅い理由
大腸の粘膜には、痛みを感じる神経(痛覚)がありません。そのため、大腸がんやポリープができても、初期段階では全く症状がありません。 「便に血が混じる(血便)」「下痢と便秘を繰り返す」「お腹が張って痛む」といった目に見えるSOSサインが出たときには、すでにがんがある程度進行してしまっていることがほとんどです。
大腸がんの罹患率は40歳を過ぎた頃から急激に上昇します。40歳を迎えたら、症状がなくても毎年必ず「東広島市の大腸がん検診(便潜血検査)」を受けるか、あるいは思い切って一度大腸カメラ検査を受けられることを強くおすすめします。
・⼤腸がんの発⾒:早期発見・早期治療で予後が⼤きく改善します。
・大腸ポリープの確認と切除:腫瘍性ポリープを切除することが、がんの予防に繋がります。
・炎症の有無:潰瘍性大腸炎など、腸に炎症をきたす病気の診断に有効です。
大腸内視鏡検査を受けるタイミング
以下に該当する方は、大腸がんのリスクや腸の危険信号が出ているサインです。スケジュールを先延ばしにせず、まずは当院の外来へお越しください。
- 健康診断の便潜血検査で「陽性(要精密検査)」となった方(1回だけの陽性でも必ず検査が必要です)
- 血便がある、便に黒っぽい血液や粘液が混じる
- 最近、理由もなく便秘や下痢が続いている、便が細くなった
- 原因不明の腹痛、お腹の張り、食欲不振、体重減少がある
- 血縁の家族に大腸ポリープや大腸がんになった人がいる
大腸カメラの適切な頻度とは?
大腸ポリープの種類や個数、家族歴などによって推奨される検査間隔が異なります。大腸がんの治療後の方や、大腸ポリープを認めた場合(内視鏡治療後の方)は、短期間での再検査が勧められますので、外来受診時にご相談ください。これまでの内視鏡検査や治療の経過を加味して個別に対応させて頂きます。
過去の検査で「異常なし」と言われた方も、1回の内視鏡検査では見逃してしまっている可能性もゼロではありません。
ただし、仮に見逃しがあったとしても5年のうちに命を落とすような状態までこと進行することは稀ですので、5年を目安に再検査をして頂けると安心かと思います。
検査頻度の目安
| 状況 | 検査頻度の目安 |
| 症状なし・50歳以上 | 医師相談(5年前後) |
| 腫瘍性ポリープあり | 1〜3年ごと(医師判断) |
| IBD(潰瘍性大腸炎など) | 1〜2年ごと |
| 家族歴あり | 40歳頃から医師相談 |
まとめ|定期的な内視鏡検査は、未来の自分への最高の投資です
胃がんも大腸がんも、日本の罹患数・死亡数の上位に君臨する恐ろしい病気ですが、「内視鏡検査によって早期発見・早期治療をすれば、決して命を落とす病気ではない」という共通点を持っています。
適切な検査頻度(胃カメラはリスクに応じて1〜3年、大腸カメラは異常がなければ約5年)を守り、定期的に胃腸のメンテナンスを行うことこそが、最大の健康投資です。
当院では、内視鏡検査に対する「苦しそう」「痛そう」「恥ずかしい」といった不安を解消するため、鎮静剤(麻酔)を使用して眠っている間に楽に受けられる検査や、プライバシー配慮、最新の拡大内視鏡システムを導入しています。
「そろそろ検査の時期かもしれない」「健診で引っかかったけれど怖くて受けていない」という東広島市および周辺地域の皆様、ぜひ一度、当院の内視鏡専門外来までお気軽にご相談ください。
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