消化器病専門医の視点:未然に防げる大腸がんと大腸ポリープの関係
◆大腸がんの原因

実は、⼤腸がんの多くは、⼤腸ポリープ(特に腫瘍性ポリープ)から時間をかけてがんに進⾏したものだと考えられています。そのため、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い、腫瘍性ポリープ(将来の大腸がんの芽)を発⾒して、除去することが、⼤腸がんの予防には極めて重要です。便潜血陽性がきっかけで内視鏡検査を受けた方の、約30~50%に大腸ポリープ(腺腫)がみつかると言われており、実際に大腸ポリープを内視鏡で切除することで、大腸がんになる率を76-90%ほど抑制できたとの報告もあります。アメリカでは大腸がん検診に、便潜血検査だけでなく、大腸カメラが含まれており、検診の際に偶然発見された大腸ポリープを切除することで、大腸がんになる方が明らかに減少傾向にあります。特に⼤腸ポリープや大腸がんは⾃覚症状が乏しく、進⾏するまで気づかれにくいため、定期的な大腸カメラが早期発⾒の鍵となります。定期的に内視鏡検査を受けることで、がんのリスクを減らし、健康な毎⽇を維持しましょう。
◆大腸ポリープの種類とがん化のリスク
大腸ポリープには、様々な種類があり、それぞれのタイプにより大腸がんになるリスクは大きく異なります。大腸ポリープは、がんになる可能性のある「腫瘍性ポリープ」とがんになる可能性の低い「非腫瘍性ポリープ」の2グループに分類されます。
内視鏡専門医はこれらを、ポリープの形や性状・色合い、内視鏡の画像強調技術でほぼ見分けることが可能です。過去に医師から、大腸ポリープがあったけど、良性なので問題ないですよと言われた方も、自分にできたポリープがどのタイプの良性ポリープであったのかを知ることが重要です。
・腫瘍性ポリープ(腺腫):
腫瘍性ポリープの代表格が大腸腺腫です。良性であっても、放置すると一部は がんに進⾏する可能性があります。ポリープの大きさや形から、必要に応じて内視鏡検査時にポリープの切除が必要です。
・⾮腫瘍性ポリープ(過形成ポリープ、炎症性ポリープ、若年性ポリープなど):
がん化の可能性は低いですが、大腸カメラによる定期的な経過観察が推奨されます。
◆内視鏡専門医の間でも、ばらつきがあるポリープ発見率
我々が大腸カメラをする際には、痛みの少ない検査を行う技術はもちろんのこと、病気の見落としがないように発見・診断する技術はそれ以上に大切です。内視鏡医が1回の大腸カメラで1個以上の大腸腺腫を発見する割合をADRといい、病気をみつける技術の指標とされていますが、残念なことにこのADRは内視鏡専門医によっても、7-53%とかなりばらつきがあります。当院では、大腸疾患の診療に造詣の深い「大腸の専門医」が、丁寧に検査を行い、見落としのない内視鏡検査を日々心掛けています。
◆⼤腸がんのリスクを⾼める⽣活習慣
・⾼脂肪・低⾷物繊維の⾷事 (赤身の肉や加工肉)
・肥満(特に内臓脂肪型)
・喫煙(発がん物質の影響) や飲酒
・遺伝要因(家族歴)
予防のためには、バランスのとれた⾷事、運動習慣の継続、禁煙などの⽣活習慣改善が⼤切です。
◆潰瘍性⼤腸炎と⼤腸がんの関係
潰瘍性大腸炎で未治療または、治療が不十分な場合、⻑期にわたり腸粘膜に炎症を起こし、知らないうちに 炎症性発がん(慢性炎症に起因するがん)を起こすリスクがあります(通常の大腸がんができる機序とは別の機序が想定されています)。 ですから、潰瘍性⼤腸炎の患者さんでは、同時性あるいは異時性に多発するがんや、⾮典型な形態の大腸がんを認めることも少なくなく、 特に発症からの期間が⻑い⽅は、炎症性腸疾患への造詣が深い専門医による定期的な⼤腸内視鏡による精密検査が不可⽋です。当院では、専門医による炎症性腸疾患(潰瘍性⼤腸炎やクローン病)に対する診療にも⼒を⼊れており、苦痛の少ない大腸カメラはもちろんのこと、きめ細やかな診療と、最新の知見をもとに、個々の状態に応じて適切な治療(治療の最適化)を⾏っておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。