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内視鏡専門医の視点:便潜血検査陽性に潜む、大腸がんのリスクと大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の有用性

便潜血陽性とは?

便潜血検査は、便の中に目に見えない微量の血液が含まれていないかを調べる検査です。侵襲的な大腸カメラと違って、非侵襲的なスクリーニング検査であり、痛みはありません。日本では40歳以上の成人を対象にした定期健診や大腸がん検診の一環として広く行われており、がんの早期発見において重要な役割を果たしています。

便潜血陽性の背後にある疾患リスク

大腸がんや大腸ポリープがみつかる可能性

便潜血検査が陽性だった場合、それは必ずしも大腸がんを意味するわけではありません。痔疾患や炎症性腸疾患、良性ポリープなどでも出血は起こり得ます。しかし、見逃してはならないのは、その背後に「進行がん」や「前がん病変=腫瘍性ポリープ」が潜んでいる可能性があるということです。

統計的には、便潜血陽性者の約3〜10%に大腸がんが見つかり、さらに20〜30%に前がん病変としての腫瘍性ポリープが発見されるといわれています。この数字は決して無視できるものではありません。便潜血陽性が出た場合、その背景には以下のような疾患が潜んでいる可能性が考えられます。

  • 大腸がん(早期がんや進行がん)
  • 大腸ポリープ(将来的にがん化する可能性がある腫瘍性ポリープ)
  • 炎症性腸疾患 (潰瘍性大腸炎、クローン病)
  • 感染性腸炎
  • 痔核

便潜血陽性者のうち、実際に大腸がんが発見される確率は約3~10%程度とされており、進行する前に発見できる重要なサインでもあります。

🩺 大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の役割

便潜血陽性が出た際、次のステップとして推奨されるのが大腸内視鏡検査です。

● 大腸内視鏡のメリット

  1. 腸の内側をカメラで直接確認することができ、大腸がんや大腸ポリープを視認できます。
  2. その場で内視鏡治療が可能
     検査中ポリープなどがあれば、その場で切除することが可能です。既に早期がんへの進行が疑われる場合には、入院での内視鏡治療で根治(治癒切除)が期待できます。
  3. 確定診断が可能
     検査中に組織検査(生検)を行うことで、良性か悪性かの判断や病気の診断が可能です。

つまり、大腸カメラは「診断」と「治療」を同時に行える非常に優れた検査手段なのです。

🧬 なぜ放置してはいけないのか?

便潜血陽性は目に見えない出血である場合が多く、「どうせ痔だろう」「一時的なものだろう」と軽視して放置すると、早期がんの発見機会を逃してしまう可能性があります。特に、早期大腸がんは、ほとんど症状が出ないため、便潜血が唯一の手がかりになることがあるのです。

特に大腸がんは早期発見すれば、高い確率で治癒が可能であり、5年生存率も90%以上と言われています。逆に発見が遅れた場合には、手術や抗がん剤治療が必要となり、生活の質にも大きな影響を及ぼします。

消化器内科専門医としての推奨

便潜血検査が陽性だった場合には、「痔だから大丈夫」と自己判断せず、必ず専門医を受診し、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。わずか半日の検査で、将来の命を守ることに繋がるかもしれません。大腸がんは、数少ない「予防ができる癌」です。早期発見・早期治療のためにも、定期的な便潜血検査と、検査結果に応じた適切な対応が重要です。

  • 便潜血陽性=精密検査 (大腸カメラ) が必須
  • 目にみえる出血や、症状がない場合でも内視鏡検査を受けることが大切
  • 早期発見・治療により大腸がんは完治が可能な病気であると認識することが重要